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2012年04月24日

『劇場法』あれこれ(一)

演劇法の制定
 
 仄聞する所によると政府は演劇法を制定して愈々演劇統制に乗りだすといふことである。誠に結構なことである。實際、日本の劇壇はあまりにも資本主義的自由主義の理念に支配されすぎ、道樂息子の勝手我儘に委されすぎてゐたのだ。今にしてこれに適宜な掣肘を加へ、よろしい指導を與へなかつたら、わが劇壇は永遠に救ひ難い卑俗と低劣の泥沼から浮び上ることは出來ないであらう。
 從來と雖も、或る意味の演劇統制はないではなかつた。しかし、それは單に保安警察乃至風俗警察の立場からする消極的な檢閲制度にすぎなかつたのだ。演劇の社會的効用性を認めて、これに文化的な統制と積極的な指導を與へるやうなものでは毫末もなかつた。
 當局が今にしてこれに氣付いたことは寧ろおそすぎるともいへるのだが、ともかくも、演劇法を制定して、その統制に積極的に乗りださうとしてきたことは日本演劇文化のため誠に喜ばしいことである。
 しかし演劇法の如き特殊な藝術分野における法律を制定して演劇統制の歩を踏み出すには餘程の愼重な考慮を必要とする。統制が一歩誤ればそれは彈壓に終る。彈壓の下に決して健全な演劇文化は生まれない。私達は統制がどこまでも眞の意味における統制であることを期待したいのだ。それ故に、演劇法の制定に際してはエキスパートとしての演劇人の参加を絶對に必要とする。当局は虚心坦懐に演劇人の意見を聴取し、それを十二分に参考として法の制定を進められんことを切望する。日本演劇文化向上のための演劇統制の實施は、この道をおいて外に求められないのである。
(昭和十五年二月、中外商業新報)