マイケル・ベネットの言葉
劇団四季が27年前の初演以来たびたび上演している、ミュージカル『コーラスライン』のオリジナルの原案・演出・振付をしたマイケル・ベネットの言葉がその公演パンフレットにある。「オーディションのときには演出家はビジネスライクであることが一番大切」と言い、「そうでないと、ダンサーたちに持たせるべきではない希望を持たせることになる」。「オーディションに落ちた人が、威厳と誇りをもって」、ほかの道、他の人生を歩むことが出来るようにしなければならない、ということだろう。彼自身が現役のダンサー兼振付師であったことから、もし踊れなくなったらどうするかを問われて、「そう、そのときは振付もやめます。それでいいのです。なぜなら、私に代わって私の役割を果そうとする、素晴らしくそして新しい素質が次々と現われるでしょうから」と答えている。この発言の十年後、ベネットはエイズで亡くなるが、このような舞台人としての矜持と覚悟、潔さは、たぶん今でも多くのブロードウェイの舞台人にとって共通のもの、水準のものだろう。日本ではまったく聞かない科白、持ち合わせないプライド、ではある。