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2009年08月 アーカイブ

2009年08月03日

「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(四)

<「天下り」全面禁止><公益法人への委託は廃止>を掲げる自民党の「政権公約」 
 
 自民党は7月31日、今月に行われる衆議院議員選挙に向けての政権公約「日本を守る、責任力。」を発表した。
 今回は、その要約版とその政策集「政策BANK」の中から、独立行政法人と公益法人について書かれているところを拾い出し、新国立劇場の存廃について考えてみる。

 まず「政権公約<日本を守る、責任力。>」では
「天下り」や「渡り」は全面的に禁止
信賞必罰の徹底など、評価制度を一新。(略)政策の重複をチェックする「政策棚卸し」や、公益法人・独立行政法人の徹底的なスリム化を進めます。
 
 と謳っている。
 また、「政策BANK」には、
■公益法人の新制度への移行
昨年12月よりスタートした新たな公益法人制度については、移行期間の5年間でスムースに移行できるように引き続ききめ細かな対応を行う。また、公益法人への委託等は廃止することとし、その中で必要不可欠な業務についてのみ、低コスト、高水準を追求しつつ、国または独立行政法人において行うこととする。
 
 とある。
 この自民党の政権公約を要約すると、
1)「天下り」や「渡り」は全面的に禁止
2)公益法人への委託は廃止
3)必要不可欠な業務だけ、国、独立行政法人で行う

 となる。
 なお、この政権公約には、政策の実行手順を図示する「工程表」が付いていないが、文末に「公約達成期限は特に記載が無い限り4年(衆議院議員の任期)」とある。
 したがって、自民党が政権を維持した場合は、独立行政法人日本芸術文化振興会、財団法人新国立劇場運営財団という舞台芸術を扱う二つの法人は、以下のように、4年以内に組織の大きな変更を余儀なくされるということだ。

 まず、1)の「天下り」「渡り」が禁止されれば、現在の日本芸術文化振興会の四名の理事のうちの二名は天下りの元官僚(一人は「文部科学省の「役員出向」の形を取っているが、実質的には「天下り」である。)は辞任することになる。また、「渡り」を繰り返している新国立劇場の遠山敦子理事長と、新任の韮澤弘志常務理事も同様である。
 2)については、現在は日本芸術文化振興会から、疑念と批判が集まる随意契約で業務委託を受けている新国立劇場運営財団だが、「公益法人への委託は禁止」となれば、同劇場の運営のための財団としては、その存続の意義と使命がなくなり、組織を解体することになるだろう。
 3)の「必要不可欠な業務だけ、国、独立行政法人で行う」は、政府が行っている三千近い事業の「政策棚卸し」を自民党が行った上でのことだろうが、果たして、芸術文化振興会の業務が「必要不可欠な」業務と評価されるだろうか。「廃止」や「民間へ移管」などの厳しい判定すら受けることになるのではないか。

 既に報じられているように、自民党だけでなく、民主党も「政策棚卸し」についてはすでに試行している。これは選挙後も、自民党も民主党も(与党であれ野党であれ)だが、中央官庁だけでなく独立行政法人の業務・事業についても恒常的に実施することになるだろう。
 「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」をじっくり時間をかけて考えていくつもりであったが、選挙を目前にして事態は急変している。静かに「新国立劇場」の行く末を案じつつ、演劇の在り方を考えている私のところにも、「新国立劇場はついにアウト」だの、「日本芸術文化振興会は存続できるのか」との声がたびたび届く。この先は、急いで日本芸術文化振興会の存廃まで考える必要があるだろう。
 次回は、「天下りの全面禁止」、「独立行政法人の解体」を以前から主張してきた民主党の「政権公約」について書くつもりだ。
 

2009年08月14日

「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(五)

<「天下り」全面禁止><独立行政法人の原則廃止><官庁外郭団体の廃止>を掲げる民主党の「政権公約」 

 民主党は7月27日、衆議院選挙マニフェストを発表した。その冒頭には
政権構想の5原則
 原則1  官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ。
 原則2  政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ。
 原則3  各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ。
 原則4  タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆(きずな)の社会へ。
 原則5  中央集権から、地域主権へ。

を掲げている。
 今回は政策の詳細が書かれている「民主党政策集INDEX2009」から、行政改革について述べているところの引用から始める。

行 政 改 革
霞が関改革・政と官の抜本的な見直し
 与党議員が100人以上、大臣・副大臣・政務官等として政府の中に入り、中央官庁の政策立案・決定を実質的に担うことによって、官僚の独走を防ぎ、政治家が霞が関を主導する体制を確立します。なお、政・官の癒着によって公正であるべき行政が歪められることがないよう、政治家と官僚の接触に関する情報公開など、透明性確保のための制度改善を図ります。また各省設置法のあり方を抜本的に見直し、内閣の意思によって柔軟かつ機動的な省庁再編を可能とするよう改めます。
行政刷新会議の設置による国の事業の見直し
 真に国民のためとなり、ムダのない行政をつくるため、各省庁に対して情報提供を求めることができる強力な権限を持った「行政刷新会議(仮称)」を設置し、自治体関係者や民間有識者の意見を踏まえ、国・自治体・民間の果たすべき役割分担の再構成を含め、集中的に国の事業の見直しを行います。
天下りの根絶
 独立行政法人・公益法人など4504法人に2万5245人もの国家公務員が天下り、天下りを受け入れた団体に対して12兆1334億円(2007年度)もの資金が流れていることが、民主党の要請によって行われた衆議院の予備的調査で判明しました。
 役所のあっせんによる天下りは、官製談合や随意契約など税金のムダづかいの原因になっています。そのため、中央官庁による国家公務員の再就職あっせんを禁止するとともに、天下りの背景となっている早期退職勧奨を廃止します。また国家公務員の定年を段階的に65歳まで延長することによって、年金受給年齢まで働ける環境を整えます。
独立行政法人改革
 独立行政法人等は、国からの補助金や交付金を使って非効率的な事業運営をしていたり、官僚の天下りの受け皿となるなど、さまざまな問題点を抱えています。このため、独立行政法人等は、原則廃止を前提にすべてゼロベースで見直し、民間として存続するものは民営化し、国としてどうしても必要なものは国が直接行います。
 天下りの受け入れの見返りに業務を独占するなど実質的に各省庁の外郭団体となっている公益法人は、制度改革にあたって廃止します。
国が行う契約の適正化
 国が2007年度に行った契約のうち、中央官庁等の幹部OBを天下りとして受け入れている団体に対するものについて、その契約金額の約95%が随意契約によるものであることが判明しました。 
 国が行く契約の適正化を図るため、会計法を改正し、国による随意契約・指名競争入札について、契約の相手方における天下り公務員の在籍状況や随意契約・指名契約入札の理由など厳格な情報公開を義務付けます。
 契約の事後的検証と是正措置を担う「政府調達監視等委員会」を設置します。また、政府に対して勧告権を有する「行政監視・評価院」(日本版GAO)を国会に設置し、税金のムダづかいを厳しく監視します。

 前回のブログでは、自民党の政権公約を、
1)「天下り」や「渡り」は全面的に禁止
2)公益法人への委託は廃止
3)必要不可欠な業務だけ、国、独立行政法人で行う
 と要約し、自民党が政権を維持した場合は、独立行政法人日本芸術文化振興会、財団法人新国立劇場運営財団という舞台芸術を扱う二つの法人は、「4年以内に組織の大きな変更を余儀なくされる」と書いた。
 この民主党の政権公約では、
日本芸術文化振興会は「独立行政法人の原則廃止」の対象であり、
「独立行政法人の事業について、不要な事業や民間で可能な事業は廃止し、国が責任を負うべき事業は国が直接実施することとして、法人のあり方は全廃を含めて抜本的な見直し」となる。
 また、財団法人新国立劇場運営財団は、「天下りの受け入れの見返りに業務を独占するなど実質的に各省庁の外郭団体となっている公益法人は、制度改革にあたって廃止」に該当する。「実質的に霞が関の天下り団体となっている公益法人は原則として廃止する。公益法人との契約関係を全面的に見直す」とあるので、財団法人として存在することもなくなるだろう。
 総合情報誌『FACTA』2009年8月号に掲載されているレポート<遠山敦子が演劇人から嫌われる理由>によれば、財団法人新国立劇場運営財団は、「今後予想される公益法人への移行作業の中で、(騒動の主因となった)芸術監督の任期の見直しなどを図っていく」のだそうだが、はたして「芸術監督の任期」を見直ししている場合だろうか。
 9月からは新しいシーズンを迎える新国立劇場だが、「天下りの受け入れの見返りに業務を独占するなど実質的に各省庁の外郭団体」として、「制度改革にあたって廃止」の対象となるこの財団の運営による「最後のシーズン」となってしまうのだろうか。 


 

2009年08月29日

「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(六)

 「駆け込み天下り」急増と「天下り役人を生贄に」の強硬論について

 読売新聞の8月4日付け朝刊には、「独法天下りラッシュ…民主政権にらみ駆け込み?」として、国土交通省が元次官の峰久幸義氏を独立行政法人・住宅金融支援機構の副理事長に起用。文部科学省は、7月14日付けで退任したばかりの銭谷真美氏が独立行政法人・国立文化財機構の組織の一つである東京国立博物館の館長に就任したこと、認可法人の公立学校共済組合の理事長に、元文部科学審議官で独立行政法人・日本学生支援機構理事の矢野重典氏を充てたと報じた。
 そして、矢野氏については04年7月の退官後、3度目の再就職となること。文部科学省側が、共済組合の地方支部長は各都道府県の教育長が務めていて公共性が高く、『渡り』禁止の例外と考えている、とし、また銭谷氏の人事については、新任の坂田東一次官が、「文科省が間に入ったのではない」とあっせんを否定した、とも伝えている。

 この「駆け込み天下り人事」については、新聞各紙や週刊誌などでも同様に報じられ、またインターネット上でも相当に書かれているようだ。
霞が関にあっては地味な役所と思われる文部科学省の事務方トップの名など世間に広く知られることもなかった。しかし、最近では、元文化庁長官で文部科学大臣も務めた遠山敦子氏が、文部科学省の外郭団体である財団法人新国立劇場運営財団の理事長としての業績、というよりも、その天晴れな女帝然とした強権ぶりで、朝日新聞始め新聞各紙や月刊誌・週刊誌の批判・からかいの対象になるほど注目されるようになった。今回の「駆け込み天下り人事」騒動によって、遠山氏の部下だった銭谷氏は、自ら望んでのことではなかろうが、かつての上司を超える知名度を獲得しそうである。

 『日経BPnet』には経済アナリスト・森永卓郎氏の『厳しい時代に「生き残る」には』が連載されているが、18日には、些か恐ろしいタイトルの文章が載った。題して「天下りを根絶するには、恐怖政治しかない」。またその小見出しには、<天下り役人1人当たり1億円がかかっている><役人にとって天下り先は龍宮城のような世界><はたして鳩山代表にえげつない対策ができるか>とある。
 そこには、「ふざけているのが、これに対する文部科学省の言い分だ。「文科省が間に入ったのではない」とあっせんを否定しているだけでなく、公立学校共済組合の理事長は公共性が高いので、「渡り」禁止の例外だといっているのだ。「公共性が高いから渡りではない」というその理屈は、わたしの頭ではまったく理解ができない。はたして民主党政権になったら、本当に天下りが根絶できるのだろうか。」とあり、民主党のマニフェストには<天下りのあっせんを全面的に禁止します>とあって、中央官庁が斡旋の証拠を隠蔽して「あっせんではありません」と言い張ったら、「民主党政権はどう対処するのか」と問い、結論として、森永氏自身の役人経験からの方策として、「役人を思いどおりに動かしたければ、恐怖による支配しかない」「理念だけで行革を叫んでいても本当の改革はできない。気の毒ではあるが、だれか生贄を出さないことには役人の意識は変わらないのだ。」と結んでいる。
 「敵失」「ばらまき」「ポピュリズム」と、何とも芳しくない形容で譬えられつつ誕生する民主党新政権だが、「恐怖政治」を敷き「生贄」を以って中央官庁の官僚を統御することが出来るのだろうか。