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「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(四)

<「天下り」全面禁止><公益法人への委託は廃止>を掲げる自民党の「政権公約」 
 
 自民党は7月31日、今月に行われる衆議院議員選挙に向けての政権公約「日本を守る、責任力。」を発表した。
 今回は、その要約版とその政策集「政策BANK」の中から、独立行政法人と公益法人について書かれているところを拾い出し、新国立劇場の存廃について考えてみる。

 まず「政権公約<日本を守る、責任力。>」では
「天下り」や「渡り」は全面的に禁止
信賞必罰の徹底など、評価制度を一新。(略)政策の重複をチェックする「政策棚卸し」や、公益法人・独立行政法人の徹底的なスリム化を進めます。
 
 と謳っている。
 また、「政策BANK」には、
■公益法人の新制度への移行
昨年12月よりスタートした新たな公益法人制度については、移行期間の5年間でスムースに移行できるように引き続ききめ細かな対応を行う。また、公益法人への委託等は廃止することとし、その中で必要不可欠な業務についてのみ、低コスト、高水準を追求しつつ、国または独立行政法人において行うこととする。
 
 とある。
 この自民党の政権公約を要約すると、
1)「天下り」や「渡り」は全面的に禁止
2)公益法人への委託は廃止
3)必要不可欠な業務だけ、国、独立行政法人で行う

 となる。
 なお、この政権公約には、政策の実行手順を図示する「工程表」が付いていないが、文末に「公約達成期限は特に記載が無い限り4年(衆議院議員の任期)」とある。
 したがって、自民党が政権を維持した場合は、独立行政法人日本芸術文化振興会、財団法人新国立劇場運営財団という舞台芸術を扱う二つの法人は、以下のように、4年以内に組織の大きな変更を余儀なくされるということだ。

 まず、1)の「天下り」「渡り」が禁止されれば、現在の日本芸術文化振興会の四名の理事のうちの二名は天下りの元官僚(一人は「文部科学省の「役員出向」の形を取っているが、実質的には「天下り」である。)は辞任することになる。また、「渡り」を繰り返している新国立劇場の遠山敦子理事長と、新任の韮澤弘志常務理事も同様である。
 2)については、現在は日本芸術文化振興会から、疑念と批判が集まる随意契約で業務委託を受けている新国立劇場運営財団だが、「公益法人への委託は禁止」となれば、同劇場の運営のための財団としては、その存続の意義と使命がなくなり、組織を解体することになるだろう。
 3)の「必要不可欠な業務だけ、国、独立行政法人で行う」は、政府が行っている三千近い事業の「政策棚卸し」を自民党が行った上でのことだろうが、果たして、芸術文化振興会の業務が「必要不可欠な」業務と評価されるだろうか。「廃止」や「民間へ移管」などの厳しい判定すら受けることになるのではないか。

 既に報じられているように、自民党だけでなく、民主党も「政策棚卸し」についてはすでに試行している。これは選挙後も、自民党も民主党も(与党であれ野党であれ)だが、中央官庁だけでなく独立行政法人の業務・事業についても恒常的に実施することになるだろう。
 「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」をじっくり時間をかけて考えていくつもりであったが、選挙を目前にして事態は急変している。静かに「新国立劇場」の行く末を案じつつ、演劇の在り方を考えている私のところにも、「新国立劇場はついにアウト」だの、「日本芸術文化振興会は存続できるのか」との声がたびたび届く。この先は、急いで日本芸術文化振興会の存廃まで考える必要があるだろう。
 次回は、「天下りの全面禁止」、「独立行政法人の解体」を以前から主張してきた民主党の「政権公約」について書くつもりだ。