2021年08月

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

アーカイブ

« 『三社祭』の浅草に遊ぶ | メイン | 『草桔梗 蔵俳の碑へ 通う径』(小汐正実作) »

『危険な綱渡り』を上演中の新国立劇場

新国立劇場2004/2005シーズンの中劇場での最後の新作公演、井上ひさし作、栗山民也演出の『箱根強羅ホテル』が、19日から始まった。この10日過ぎから、新国立劇場の内部からも外部からも、井上ひさし氏の本が仕上がらないとの情報がもたらされ、井上氏とその周辺の新国立劇場関係者の、相変わらずの懲りないダラケた不見識極まりない製作姿勢に呆れていた。台本の出来上がりは16日、3日後の開演にはなんとか間に合い、上演延期や中止の事態は辛うじて免れた。舞台の出来は当然のことだが良くないそうで、23日の休演日あたりも、稽古をし直したのではないだろうか。この作品の演出担当で芸術監督の栗山民也や、劇場には井上氏との絡みで縁故就職、氏の作品を専ら担当する制作部員達は、少なくともこの企画が決定されて以来、井上氏とどんな接触をしていたのか。新作執筆についての契約はどうなっているのだろうか。上演の1年前とか半年前には完成稿の提供、というような約束はしていないのだろうか。出演契約はどうなっているのだろうか。本が無いままに上演スケジュールを決め、キャストもスタッフも本も読まずに企画に参加する、これが新作、というもののあり方なのだろうか。本の出来上がりが遅く、上演中止や延期がたびたびのお騒がせ井上企画だが、こんな危険な綱渡り状態を続け、またそれを許している新国立劇場という組織、箍が緩みすぎているのだろう。独立行政法人の実質的な下部組織として、十桁の税金が投入され、業務の効率化や透明性が求められる新国立劇場、この井上問題だけでなく、演劇研修所の設置についても、演劇製作団体や演劇人への説明、説得、議論を回避し、以前から「国立の演劇センター構想」などを主導する井上氏本人をはじめ、氏に近い芸術監督や数人の協力者だけでことを進めるなど、独断専行が目立つ。設置に先立つ一年前には、事前調査にも数百万円の調査費が予算化され、ほぼ同じメンバーだけで海外に調査旅行に出掛けている。この演劇研修所は新国立劇場の建物の中に用意されず、新宿の外れの廃校で実習が行われている。殆ど演劇の素養の無い研修生15人の養成に、この一年だけでも7千万円近い税金が遣われるそうだが、その金の使い道は当然のように公開されない。NHKの番組制作費の着服や不正流用が問題になったばかりだが、法外に高いといわれる台本料や演出料、スタッフ費、舞台費、出演料を払い、海外招聘作品にも相場を遥かに超える上演料を払い続け、旧知の海外エージェントも「いまどき奇特」と揶揄する新国立劇場、その製作態勢や経費支出などは、いつ情報公開されるのだろう。
政界との癒着体質の一掃も期待されて、NHK副会長に就任したはずの永井多恵子氏の初仕事は、お決まりの永田町の議員センセイへの挨拶回りだったそうだ。前会長の傀儡、軽量級と見られていた永井氏であればそれもまた仕方の無いこと。文部大臣経験者で、霞ヶ関・永田町でも実務型官僚としての評価が高く、新国立劇場と距離を置く劇団四季の浅利慶太氏や静岡県舞台芸術センターの鈴木忠志氏らとも親しいといわれる遠山敦子新理事長、その最初のそして最大の仕事は、箍が緩んだ製作態勢に大鉈を振るうことではないだろうか。