2017年05月

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推奨の本
≪GOLDONI/2008年5月≫

ジャン・ジロドゥ『パリ即興劇』(訳:寺川博)
 『ジロドゥ戯曲全集第4巻』 白水社 1958年

ジュヴェ 言わせてもらうが、国家が間違っているのはその点なのだ。フランスの運命は、この世界において、自制と冷静の器官となることだなどと言うのはちゃんちゃらおかしい。フランスの運命は世界のうるさ型になることだ。フランスは世界中の既成秩序の陰謀の裏を掻くために創られ成長して来たのだ。フランスは正義だ。しかし、正義が、あまり長い間正しいとされていた連中が正しいとされるのを防げる限りにおいて。フランスは良識だ。しかし、良識が告発者であり、矯正者であり、復讐者である時にはだ。フランスがその名に価するものである間は世界が賭けられることはあるまい。仕事や、力や、あるいは脅迫によって成上った国は落着いていられまい。秩序や、平和や、富の中には、フランスが暴きたて、罰しなければならない人類の自由に対する侮辱がある。広汎な正義の適用においては、フランスは神に次ぐものであり、時間的には神に先立つものだ。フランスの役目は用心深く善と悪、可能と不可能を選びわけることではない。そんなことをしていたら駄目になってしまう。フランスの独創的なところは正義であるバランスにあるのではなく、公平無私に達するために使っている、不正になるかもしれない重みにあるんだ……大ブルジョワや豊かな牧師や、権力を握っている暴君がみんな、夜、掛蒲団を引っぱりながら、「まあなんとかなるだろう、しかし、あのフランスの奴がいる」と思うようだったらフランスの任務は果たされている。追放された人や詩人や迫害されている人が寝床の中で言うこれに相当する独り言は想像がつくだろう。
ロビノー 認めよう。しかし、演劇はそういう努力をする国家を、どの点で助けてくれるのか?
ジュヴェ モリエールという男のことを聞いたことがあるか?
ロビノー 室内装飾業者の息子で椅子にもたれて死んだ男か?
ジュヴェ そうだ。デカルトの時代に明晰を、コルベールの時代に正義を、ボシュエの時代に真理をフランスに与えた男だ。みじめな河原乞食であった彼が、国家の後ろ楯がなかったら全能の三階級に対して、流行や反対派に対して何が出来たか考えたことがあるか?
ロビノー モリエールを連れて来い。ルイ十四世になってやろう。
ジュヴェ はじめたのはルイ十四世のほうからだ。そちらからはじめろ。それに選択の余地はない。ジャーナリストは多くとも報道は無く、自由はあっても自由人は少なく、正義は毎日次第に判事の手から弁護士の手に移っているこの国において、お前には我々以外の声が残っているのか? 議会か? 演劇の声をからしてしまった所には演説家はいない! しかし、毎晩成上り者や、汚職をした者や、下司な奴が、「なんとかなるだろう、しかし芝居という奴がある」と独り言を言う間は。若い者や、学者や、つつましい家族や、立派な家族や、人生に幻滅した者が、「何もかもうまくゆかない、しかし芝居がある」と独り言を言う間は、まだ大丈夫だ。
ロビノー しかし、そういうことは作者におそろしい義務を負わせることになる。
ジュヴェ 作者に? いいや。作者の義務は一つしかない。立派な作品を書くことだ。この言葉がすべてを含んでいる。しかし、お前には大きな義務がある。お前は芝居を自分の口のように気をつけ、どんな塵も、どんなしみも残さないようにしなければならない。その清潔に気をつけよ。クレジットの問題ではない。金歯の必要はない……健康の、呼吸の問題だ。芝居が蝕まれたら国民も蝕まれる。お前は一億持っているのだから、まず神殿から―我々の小屋をこう言っても怒らないだろうな―偽りの商人を追い出すために使え。場代を失ってもお前は得をするのだ。(略)