2021年09月

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

アーカイブ

« 開業記念週の来客に教わるもの | メイン | 白洲次郎とスナフキン »

泉下の演劇の先達たち

17時半前、外出の予定があり早仕舞いしようかと思ったところに、評論の菅孝行氏がお越しになる。富山県利賀村で行われた、演劇人会議主催の演出家コンクールでの、上位入賞者たちの作品について伺う。18時に店を閉め、菅氏は天王洲・スフィアメックスへ、私は六本木・俳優座劇場へ向かう。(劇団俳優座公演、宮本研作『ザ・パイロット』の初日)開演時間すれすれに客席へ入って着席した途端に後ろの席から声を掛けられる。声の主は、東京選挙区選出の参議院議員の鈴木寛氏。彼は昨夜の濱口博史弁護士の学友で、二十数年の付き合い。教育、IT政策、民間非営利活動、そしてサッカーのJリーグなどスポーツ振興の推進役。通産省勤務の時は、私の事務所での観桜会や月見の宴に駆け付けてくれたり、勉強会に誘ってくれたり、何の必要か私に「人脈リスト」の提出を迫ったり、京都の劇作家・松田正隆氏が拙宅に泊まる折には、自宅より遠いのに一緒に泊まりに来たりした。近々の再会を約して別れた。
俳優座がその養成所を閉じて三十数年。千田是也、青山杉作、小沢栄太郎、東野英治郎などの劇団員はじめ、木下順二、鈴木力衛、中村光夫、吉田精一、菅原 卓、三上 勲、吉田健一、伊藤熹朔などのビッグネームが講師を務めたあの俳優座養成所は、鎌倉アカデミア同様に、私の夢である、民間による『舞台芸術図書館』の理想像。最近の新聞記事によると、新国立劇場が演劇養成、研修所の設置を計画しているようだ。主唱する同劇場の演劇部門芸術監督がどこの劇団出身かも、どこの養成機関出身かも、寡聞にして知らない。海外の養成機関の実態調査を委嘱された人々のことも、その調査内容も詳らかにされていない。どんなものを構想しているのか具体的には不明だ。この俳優座養成所については検討したのだろうか。新劇旧三座で唯一残る養成機関である文学座研究所や、四季や青年座、昴、円の俳優養成機関に対する調査検討は充分になされたのか。研修所設置に向けての文部科学省の来年度概算要求には入っているようだから、税金で賄うつもりではあるらしい。かつての俳優座、あるいは三枝博音、林達夫、村山知義、青江舜二郎、服部之総らの鎌倉アカデミアなど敗戦後の経済的には貧しい時代に、自助努力の尽きるまで、手弁当で、演劇教育に心血を注いだ今は泉下に眠る先達は、演劇は国・行政の補助金(すべて税金)でするもの、と決めてかかっているかのような昨今の演劇人がしようとする『教育』を、どんな気持ちでみつめておられることだろうか。