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白洲次郎とスナフキン

ある演劇製作団体で今年から制作助手を務めている、劇作家志望のK君から送られた書下ろしの短編戯曲を繰り返し読んでいたら、大阪府能勢町の浄るりシアターの松田正弘事務局長と柴田佳明さんが訪ねてくださる。国立劇場に出演中の文楽の演者との打合せのための上京で、午前中は総務省の外郭団体『地域創造』にも行って来たという。同シアターの大内祥子館長とは、三十年近いお付き合い。能勢にも93年のオープン時から伺っていて、その時以来、松田さん始め元職・現職の方々とは親しくしている。全国中の行政立ホールと同様、事業予算・人員の削減など厳しいホール運営を強いられているが、『芸術』『文化』『演劇を活用したまちつくり』という前提、お題目を一度忘れて、「地域の経済活動、社会活動と連動したホールの企画、ホールの生きる道を探ろう」とアドヴァイス。近いうちの再会を約して、お二人は半蔵門に向かった。入れ違いに、文学座の本山可久子さんが、大ぶりの見事な二十世紀梨を抱えて御来店。先日お送りした本のお礼だそうだが、過分なお心遣いで恐縮する。
先々週、12年ぶりに再会した倉敷の山川高紀氏が、神田須田町での会合を終え、立ち寄ってくださる。かつての私の印象は、「自分たちの前をあなたが通ると、その後で風が吹く。その場が暖かければ冷たく、冷たければ暖かい風になって。本当に風のような男」だそうだ。私が尊敬する「風の男」白洲次郎の風とは大きな違いの風ではあろうが、ほんの少しだけ白洲さんに近付いたようで嬉しい。度々譬えられる「スナフキンのような男」よりは、はるかに嬉しい。山川氏のいる間に、ご近所のメディアプロデ゙ューサー・後藤光弥氏が来店。彼とはディアギレフの話をしているところに、背広姿の青年が登場。前に一度来たことがあると言うので、「名乗るな、あなたのフルネームを思い出すから」と言って、先客二人も参加しながら、記憶の糸を手繰るがついにギブアップ。早稲田大学文学部出身、この春出版社に勤め始めたO君。演劇とメディアについて研究したいので、来秋に大学院の受験をするつもり、と言う。早稲田かと訊くと、「あそこは学部の4年でこりごり」。話し始めた私たちを気遣ってか、(車の通らない路地にある)店の前で初対面の先客二人は談笑していた。壮大な夢に不釣合いなほど狭小な空間のGOLDONIは、路地までサロンなのだ。