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バイエルン総監督・ジョナス氏の講義録(十)

サー・ピーター・ジョナスは、サセックス大学で英文学を学び、マンチェスターとロンドンとニューヨークの音楽院の大学院課程でオペラと音楽の歴史を修め、キャリアの殆どすべてを歌劇場の運営に携わった人物である。
ジョナス氏は、13年務めたミュンヘンのバイエルン州立歌劇場の総監督を、2005/2006年のシーズンが終るこの7月には退くことになっていて、1974年に名匠ゲオルグ・ショルティ率いるシカゴ交響楽団のアシスタント、芸術監督(76年)になってからの三十年余のインテンダント生活に別れを告げようとしている。
氏は現在60歳、質疑応答の後半では、「インテンダントの仕事は、自分の生活を捨てるということでもあって」、「引退して、自分の生活を取り戻したい。そして趣味の長距離歩行をしたい」と語る。「スコットランドの一番北から、ヨーロッパの一番南のパレルモまで。それから、ワルシャワからリスボンまで。リュックを背負って、毎日20キロ、30キロの歩行をしたい。60歳からは人間の体は変わり、特に膝が駄目になり、1日20キロの歩行は67歳を超えると出来なくなるというので、出来るうちにやりたい」とも。
今月のブログ『提言と諌言』は、昨2005年4月9日、ドイツ文化会館OAGホールで行われたシンポジウム『オペラ劇場運営の現在・ドイツ』(主催・昭和音楽大学オペラ研究所)でのバイエルン州立歌劇場総監督のピーター・ジョナス氏の講義と質疑応答を取り上げたが、氏の質疑応答での最後の言葉を採録して、年度末の最後の「提言と諌言」とする。

我々は我々の感情、思考、感覚を伝えていかなければいけない。朝食の席とか、シンポジウムでは伝えられないものを、「舞台」では伝えられる。愛、憎しみ、感情、善悪ということはどういうものかを伝えられる。社会に生きるとはどういうことかというメッセージ、あるいはインスピレーションを、「舞台」の中に見つけることができる。コミュニケーションの最大最高の形態、それが私はオペラだと思っている。