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「文化庁予算の大幅削減」について考える(四)

 「劇団四季が被災3県の小中で公演 今夏、子どもら招待」(日本経済新聞) 

 先月29日に劇団四季から届いたリリースには、「東北特別招待公演を実施」するとあった。
 5月30日付けの新聞各紙は、この発表記事を載せている。写真付き、ベタ記事扱いと新聞の扱いも様々だが、以下は記事ボリュームが比較的に大きい日本経済新聞の写真付き記事(共同通信配信)である。

 
 ≪『劇団四季が被災3県の小中で公演 今夏、子どもら招待』
 劇団四季は29日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島各県の計11自治体の小中学校で、7月下旬から8月にかけて同劇団のオリジナルミュージカル「ユタと不思議な仲間たち」を被災者向けに上演する、と発表した。
 「ユタと不思議な仲間たち」は、東北の自然を背景に、いじめに苦しむ少年と座敷わらしとの心の交流を描く作品で、東京で上演中。被災地では設備の関係で、演出や舞台効果などの一部変更を検討しているという。
 同劇団によると、岩手県の4自治体、宮城県の5自治体、福島県の2自治体で計約20公演を予定。会場は原則として各地の小中学校の体育館から選ぶ。観客には、地元の教育委員会を通じて地域の子どもを中心に1公演あたり300~800人ほどを無料招待する。
 現時点で上演が決定しているのは岩手県釜石市の釜石中学校、宮城県南三陸町の歌津中学校、福島県南相馬市の鹿島中学校。今後、公演数が増減する可能性もある。
 劇団四季は「私たちは舞台の感動を届けるのが役目。こういう形であれば被災した方々のお役に立てると考えた」としている。≫

  
 前回のブログで取り上げた五嶋みどりと、この劇団四季に共通するのは、それぞれの活動の早い時期に、自力での舞台芸術の振興を意識し、そのための財団を設立、今も多くの時間、資金、労力をその活動に割いていることである。五嶋は11歳でデビューしたが、その十年後の1992(平成4)年、文化・芸術の振興と子供の健全育成を活動目的とした「Midori&Friends」、「みどり教育財団東京オフィス」(現在のNPOミュージック・シェアリング)を立ち上げている。
 劇団四季の創立は1953(昭和28)年だが、その二十年後の1973(昭和48)年、舞台芸術の普及と青少年の豊かな情操の涵養を目的に「財団法人舞台芸術センター」を設立している。したがって、39歳の五嶋みどりは二十年、劇団創立58年の四季は四十年に及ぶ社会貢献活動の歴史を持っている。

 前回は五嶋みどりの演奏活動を紹介したが、今回は昨年の四季のトピックスを挙げよう。
 劇団四季の昨年の年間公演は3703回、またその売上額は202億円である。また、サービス産業生産性協議会が実施している31業界、350社を対象とした2010年度の顧客満足度調査(年4回調査、総回答者数105697人)では、東京ディズニーリゾート、アマゾン・ドット・コム、トヨタ自動車などを抑えて首位になっている。(「日経MJ」2011年4月13日付け)
 五嶋の社会貢献活動としての昨年実績での出演回数は把握できないが、アメリカ国内の大学、高校での活動、日本でのミュージック・シェアリングの活動報告公演など、五嶋の年間84回にわたる公演のうちの一、二割は、この社会貢献活動と思われる。劇団四季については、昨年の3千7百を超える公演中、この一割を超える4百回ほどは、四季と企業、自治体、労働組合など広範な組織が協働しての招待公演のようだ。五嶋、四季の、その一般的な上演料は知る由もないが、日本人演奏家として、日本の演劇・ミュージカル製作団体として、ともに最高額ではあろう。五嶋、四季の社会貢献活動を金額ベースで考えても、個人、或いは一組織のそれとしては途方もないものとは言えるだろう。