行き帰りの乗換駅のホームに吊るされた電光掲示板には毎日のように、「○○時○○分ころ、××駅構内で起きた人身事故のためダイヤが乱れています……」の文字が流れる。毎年、三万人もの自殺者があるというから、この東京では、毎日五人十人が自死しているのだろう。働きざかりの四十代、五十代の男性が多いという。演劇の世界でも、戦後だけでも久保栄、加藤道夫、関堂一、市川団蔵。知己でいえば、大河内豪氏、若狭隆人氏など。学生時代の友人では、幾人かが自裁している。朝な夕な、出会ったこともない人々のいたわしい死をきっかけに、青春期をともに過ごした、あるいは過ごし損なった友人たちを想う。学生時代には、聴きたくもない浄瑠璃や歌舞伎評を無理やり聴かせたりしたものだが、そんな私に、呆れたり、からかったり、苦笑した彼らの言葉はいつも、『君には演劇があっていいな』。合掌。