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宣長さんの『借書簿』

10月9日は台風のため、GOLDONIは久しぶりの臨時休業。当初は夕方早めに店を閉め、天王洲・アートスフィアに、マールイ劇場『三人姉妹』を観に行こうと思っていたが、これもご破算。『かもめ』を誘ってくださったMarlie Vさんから、「Typhoon night」で始まる『三人姉妹』観劇記mailが届く。10日の朝、大手新劇団のT氏からも、観てきました、との電話。今日は、若い友人の、Bastaの長谷川仰子さんからも、「久しぶりにお芝居を拝見したという気持ち」とのmail。「終幕で降らした雨だけがよくわからなかった」とも。その直後、大阪外国語大学教授の堀江新二氏が久しぶりに立ち寄られる。マールイの芸術監督ユーリー・ソローミンに会っている氏に、「雨はなんですか」と伺うと、「ソローミンは姉妹に泣かせる訳にはいかないので、空に泣かせたと言っていました」。堀江氏の後は、一見のお客が続き、15時ちょうど、約束の三浦明子さんが来店。大学を出て数年働き、今はアルバイトをしながら、デザインの学校に通っている。昨日の16時過ぎから、私が行けなくなった14日のバレエ公演のチケットをどなたかに使ってもらおうと、平日の午後でも時間的な余裕がありそうで、mail‐addressを伺っている12人ほどを選び、次々にmailでご案内した。休日の午後ということもあり、20時までの間で最初に連絡を戴いた方に差し上げることにした。送信した直後から、札幌公演中です、当日は大阪出張です、先約があります、などのNG連絡があり、18時過ぎに三浦さんからの「行きたいのですが」の電話で決まり。その直後に続いてお二人から、行きたい、一番乗りでしょうか、とのmail。
4年前の開業前には、GOLDONIの運営がランニングで多少でも黒字が出たり、資金面での協力者があれば、年に幾人かを航空券代を援助して海外観劇の旅に行かせたり、月に一、二本の公演を選んでチケットを求め、総見でも出来たらと思っていた。残念ながら、初期投資費用を含め8桁の累損を出している現状では、まったくの夢物語。昨日のように、自分の行けなくなった公演や展覧会のチケットを差し上げることぐらいが、今は精一杯のこと。あとは本を買いたいが、持ち合わせが無いという一見の人にも掛売りをしたり、非売品にしている私の蔵書でも、売り物の本でも新刊でなければ貸して差し上げることくらい。本居宣長が積極的に本を貸していたことを、一昨日初めて宣長の貸し本の手控である『借書簿』を観て知ったが、『こんなところも宣長さんに宮島さんは似ている』と独り言ちた同行の友人N氏の言葉が、GOLDONIの運営やこれからの図書館作りも含めて、この数年が徒労に終るのかと沈み勝ちにもなるこの頃、労いと慰めと励ましだったのかと、いまになって気付いた。