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『Gentleman』に優しさを教わる日日

16日の早い午後、毎日新聞特別編集顧問の諏訪正人氏が久しぶりに見える。「『未来』のエッセー、読みました」。光栄なこと。氏は毎日新聞朝刊の第一面の『余録』を23年間書き続けた名コラムニスト。また、アヌイ、ジロドウ、コクトーなどフランス戯曲の翻訳家・紹介者としても著名。厚顔な私でも畏れ多くて、お読み戴いた感想は伺うことが出来なかった。「翻訳」のあり方など、ご親交の深かった故・中村真一郎氏など翻訳の名手の姿勢などの例を引きながらお話下さった。近々HPのコンテンツを増やすつもりでいるので、このあたりのことに触れてのエッセーをお願いする腹づもり。厚かましすぎるか。注文の本を受け取りに来店した佐々木治己君を「うちのGOLDONI JUGENDです」とご紹介、佐々木君の「にしては、ひねてますが…」のご挨拶に、三人で大笑い。フランス留学を計画している佐々木君に、フランス演劇の大家はにこやかに話しかけて下さった。
昨17日の15時40分頃、トヨタ自動車・コンポン研究所顧問の井上悳太氏が見える。この14日の午後に初めてお越しになったばかりで、「このあいだは長い時間話が出来て、すごく愉しかったから、東大に出掛けた帰りで、時間は余りなかったのですが、また寄りました」。光栄なこと。奥でお休み下さい、とお茶の用意を始めると、お渡しした『未来』を早速読んでくださったようで、「(私の蔵書で埋まった)店の奥には簡単には入ってはいけないんでしょう」。高い教養・見識は無論のことだが、まったく豪ぶることの無い、お人柄の良さや、話題の豊富さや深さなど、先日の1時間半ほどの会話で感じ入り、己の至らなさを思い知らされた。「今日は20分だけ」と仰って本をお買い下さり、近くの古書店で求めた村松剛著『評伝ポール・ヴァレリー』のこと、近所の蕎麦屋や料理屋のことなど伺った。
今日の夕方、ご常連の好川阿津志氏が、先週に続けてお越し下さる。氏は劇団創設間もない頃の四季演出部OB、後にアメリカのテレビ番組や洋画の日本語版制作の演出を手掛けられ、今も俳優、声優の育成に努められている。今までに幾人もの若い友人・知人や教え子に、『宮島さんに叱られてきなさい』とGOLDONIをご紹介下さる。(そんな訳で好川さんの紹介での来店者は、いつ殴りかかられても良い様に半身に構えている。)演劇を活用したコミュニティでのボランティア活動に情熱をお持ちで、今日も練馬区の民間立美術館の小ホールの有効活用に智慧を貸されていることなど伺う。二十歳と最も若いGOLDONI JUGENDが来店し、静かにじっくり本撰びをしていたら、氏はお帰りの時、『この本を読みなさい』と仰り、棚から三木のり平著『のり平のパーッといきましょう』を取り出し、「私に譲ってください。彼にプレゼントしますから」。好川さんの若い人達を育てようとの熱意、ほんものの優しさに頭が下がった。
命永らえ、十年後二十年後、お三方のような紳士になっているだろうか。