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昨今の『演劇製作』について考える

昔語りで恐縮だが、劇団に所属して製作管理を担当していた二十代半ばの頃の話。ある科目の予算の執行管理をしていて、トップからコスト節減の厳命が下ったことがある。他の新劇団ばかりか興行資本よりもコスト意識が高いことでも知られていた劇団だが、年度の途中でも原価の見直しなどが要求された。期末にその年度の支出を締めてみると、当初の年度予算案の10%強、二千数百万円の削減になっていた。トップに報告すると、「自分で予算案を作り、それを自分で執行して1割カットしたから何なんだ。最初から甘めに高く見積もれば、いくらでも削減できる」と叱責を受けた。私には意図的に高い見積もりで予算を組んだ覚えもなく、何人かの上司の修正が入ったものでもあったが、このことで、予算案の作成者が執行責任者にもなる演劇製作、とりわけ製作管理業務の難しさを教えられた。
その数年後、独立して演劇製作会社を始めた当初のこと、製作の方針や舞台美術予算を提示する必要もあり、演出者と舞台美術家の最初の打ち合わせに立ち会ったことがある。その折、両者から縦長の客席を少しでも変えるべく、客席を潰して舞台を張り出したいとの提案があった。私もその案に同意したが、「ただ、収支予測も立てて臨んでいる事業。舞台美術費も提示した通り。客席潰しによる減収分(料金×席数×公演回数×有料入場率)は、美術費とする」と話した。両者はともに初めて聞くような製作者の論理に、それぞれが不満を口にしたが、譲らない私に押し切られて不承不承受け入れた。
残念ながら力足らず、二十年ほどは舞台の現場から離れているが、演劇製作における予算、その予算執行管理とはそういうものだと今も強く思っている。
最近の演劇製作はどうだろうか。
かつての新劇団や、アンダーグラウンド系、大学演劇出身などの小劇場系の劇団などは、多かれ少なかれ所謂どんぶり勘定で演劇製作をしてきた。コスト意識など芽生えるはずもない。1990年以降の舞台芸術を取り巻く環境は変わり、なかんずく行政による支援・助成が恒常的なものになった。劇場・ホール、劇団などの製作団体、挙げ句の果ては芸能プロダクションにまで、国、地方自治体から、多いところは億を超える金額が毎年投入されるようになった。コスト意識がなくとも、集客努力はしなくても、多額の助成金に有り付ける。1公演あたりせいぜい2千、3千人しか集客できない製作団体にも数千万円の助成金が委託事業費などの名目を使って交付されており、中でも賢しい連中は海外の演劇フェスティバルなどに参加し、国際交流だの文化発信だのとの、取って付けたようなこの国の痩せた文化政策に便乗して、文化庁や国際交流基金などからの助成金を手に入れている。
そんな遅れて来た行政主導の文化バブルの昨今、年間50億円を超える税金が投入されている新国立劇場だが、この劇場のコスト、集客、作品創造などに現われる役職員・事業協力者の倫理や意識は、はたしてどんなものなのだろうか。