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『規制改革・民間開放』と『芸術文化振興』(弐)

「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧する」メッセージが発表された後の11月15日、規制改革・民間開放推進会議は事業民営化等ワーキンググループ主査、市場化テストワーキンググループ主査の連名で、「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧する」に対する同会議としての意見表明を発表した。
『規制改革・民間開放・市場化テストは
 文化芸術の振興のためにこそ行われます。』
―11月3日付け「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧する」について―
と題した二千四百字ほどの文章を要約する。

≪「文化芸術」の重要性については当会議としても、まったく異論がない≫
≪日本の優れた文化の継承・発展のためにこそ、規制改革・民間開放・市場化テスト等の推進に努力している≫
≪「真に国民のためになる文化芸術の振興・研究・管理保存・展示はどのようなものであるべきか」という問題意識を持って、国・地方において真摯な運営形態の見直し作業が進められている≫
≪しかしこのメッセージは、これらの見直し作業を支持する意見を「財政難や行政改革を背景に、文化芸術の分野においても、市場原理の導入や、効率性・採算性を重視して施設運営などを求める声」として一蹴し、論拠も示さずに否定している≫
≪「市場化テスト」は、国民に対し公的財源により提供される公共サービスについて、サービスの受益者・納税者としてそのコストを負担している国民の視点に立って、当該公共サービスの質とコストの両面から、最も優れた者がそれを提供していくこととする制度であり、コスト削減効果のみを判断基準としておらず、従来提供されてきた公共サービスの質の維持・向上を図ることを前提に、官民を問わず、最もコスト効率性の高い事業者を選定する仕組みである≫
≪公的財源であるならば、一層質の高い国民本意のサービスの提供を目指すべきだ≫
≪メッセージの呼びかけ人・賛同者は、現在の国立美術館、国立博物館、文化財研究所が、真に国民のためのものとするならば、現在の運営主体である独立行政法人等に対して、胸を張って「市場化テスト」に参加し民間事業者より優れていることを立証せよと慫慂すべし≫
≪「長期的ビジョン」や「独立性」の保持が、「公的組織」にのみ可能とは考えず、公務員や独立行政法人の職員が担えばこれらの目標が問題なく達成でき、民間人では達成できないという命題について理論的または実証的に明らかにした分析を当会議は知らない≫
≪「公的組織」が一律にこれらの点で優れているという主張は、「官尊民卑」にほかならない≫
≪当会議は、官民を問わず、より優れたサービスを提供できる主体がサービスを担うべきだと考えているのであり、「民間主体が常に優れている」という決め付けや、「初めに民営化ありき」という結論を前提にはしていない≫

旧臘28日の『提言と諌言』にも引用したが、『規制改革・民間開放推進会議』の最終答申の前文には、
「小さくて効率的な政府」の実現に向けて―官民を通じた競争と消費者・利用者による選択―」とあり、
≪「官による配給サービス」から「民による自由な競争・選択」へと制度の転換を目指す≫
≪しかし現状は、官自身あるいは官が定めた特定の者だけが、官によって予め決められた財・サービスを提供するという社会主義的システムにおける市場の機能を無視する配給制度≫
≪我が国の公共サービスの大部分は、この「配給制度」により支配されている「官製市場」の下にある≫
≪「配給制度」は既得権益と非効率≫
≪生産者や官の関係者の特殊な利益を擁護≫
≪官だけがいわゆる公共公益性を体現できる唯一の主体であるという旧来の発想は終焉を迎えたと言わなければならない≫
と述べている。

「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧する」メッセージの呼びかけ人・賛同者そしてその仕掛人たちの危惧の本質は、
<「大きくて非効率な政府」であるべきで、官民を通じた競争だの、納税者・受益者による選択など許さない。
文化芸術振興は行財政改革に優先されるべきもの>
との主張が否定されること、だったのかもしれない。