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バイエルン総監督・ジョナス氏の講義録(四)

ジョナス氏の講義は続く。「オペラ・カンパニーとその統率」について語っているところを要約する。
忘れてならないことは、多くの成功しているオペラ・カンパニーには、高い社交性と高い連帯意識とがある。そしてその殆どの職員は他との競合を意識していて、自分たちを脅かす事象、たとえば政府や地方行政やスポンサーからの支援を失うことも経験している。また、自分たちの長所と短所も理解している。競合が、生き残ろうとの本格的な決意とヴィジョン以外にも、組織的問題であることも理解している。結局、成功しているカンパニーは、自らの存在理由、自らの使命、自らの社会的な務めを自覚している。
バイエルン州立歌劇場での我々の仕事は、今シーズンを例に挙げると、352回の公演をこなすこと。それは、53のオペラのプロダクション、20のバレエ・プロダクション、コンサートや実験的公演、リサイタル、レクチャー等々の開催である。
我々の目標は、出来るだけ幅広いレパートリーを取り上げること、そして出来るだけ高いレヴェルの公演を適正な価格で提供すること、オペラそのものを振興させ、アーティストを援助すること、そして多くの民衆にオペラを聞いてもらうようにすることである。
バイエルンでのオペラ制作は、次の基本姿勢を念頭に置きながら構想している。
その一、モーツァルト、ワグナー、シュトラウス、ヴェルディの4人の「この歌劇場の神様」の作品を取り上げる。
その二、この劇場でないがしろにされていたバロック時代の作品を復活させる。
その三、世界初演となる新しい作品を委嘱する。
その四、必ずしも人気があるとは言えない前世紀の作品を取り上げる。
その五、ベルカントの新制作を毎年組み入れる。
その六、一演目は私の好みの作品を観客に届ける。
そして、芸術ディレクター、マネジング・ディレクターの二人のインテンダント代理、音楽監督、バレエ監督、主任ドラマトゥルグ、制作監督、技術監督、広報・プログラム開発部長、音楽部長などのシニア・マネジメントの面々と、この六つの基本姿勢から選んだ企画を、インテンダントである自分の考え方、ヴィジョン、夢などを交えて話し合う。このプロセスがあることによって、自らが作るオペラや民衆に仕え、またそのことへの使命を認識することが出来るのである。
インテンダントの役割とは、チームのエネルギーや創造性を高めながら、自らの持つヴィジョンを貫くことである。