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バイエルン総監督・ジョナス氏の講義録(八)

ヨーロッパやアメリカの都市が保守化する社会情勢が、バイエルンのオペラ劇場の運営、オペラの製作にどう影響しているか、また、若い世代にオペラを見てもらうためのバイエルンの具体的方法はどんなものか、とのモデレーターの質問に、ジョナス氏は答える。以下は要約である。
まず第一には、国家・地方行政の財政状況、税収の悪化などのマイナス要因がある。
従って、劇場予算のより多くを直接の事業収入から得なければならない。このことは10年20年と長期スパンで実施していくべきことであり、我々はアグレッシブなビジネスのように運営している。劇場のマーケティングも非常に現代的になっている。現在のドイツの経済状態は決して良くなく、厳しい運営を強いられているが、362年の途切れのない歴史を歩んできたバイエルン歌劇場は、現代のバイエルンの人々の精神にも根付いている。
マーケティング、料金設定にも充分配慮している。公演によっては、立見席は3ユーロ(約420円)、5ユーロ(約700円)で見られるようにしている。
その次には、舞台でどれだけ冒険ができるかだ。政治家や官僚たちは、こういう難しい状況では保守的であるべきだと言うが、我々は、人々を刺激し続けなければいけない。芸術を通してそういう活動を続けなければいけない。よりチャレンジングなオペラ製作が必要であると考えている。
若い人達には、劇場の公演に足を運んでもらいたく、低廉な席を用意している。彼等のためのプログラムも作り、また歌劇場のメンバーが学校にも出向く。小さな子供たちが歌劇場に通うという経験を憶えるようにしている。我々のオペラ製作では、現代的冒険的な作品は聴衆の中に若い人たちが多い。オペラがただ楽しむためのものではなく、自分たちのことを語っているものであることを理解させ、我々のメッセージを伝えなければならない。そのメッセージは、「オペラはみんなのため」という短いものである。短いメッセージであれば、つまみ食い的な選択を好む若い世代にも理解できる。そして将来的には、オペラは講演の中で写したビデオほどに短いものなっていくのかもしれない。バイエルンのオーケストラの演奏家たちにも、『マイスタージンガー』を5時間演奏するよりも、ビデオ・クリップの短さのほうが好きという若い世代もいるのだから。