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「新国立劇場の開館十年」を考える(十三)
≪毎年巨額な国費が投入されながら、理事長・芸術監督が専念しない不思議な劇場(一)≫

 肩書は年齢の数を越えるといわれる六十九歳の遠山理事長
 前回は、遠山敦子氏が新国立劇場運営財団の常勤理事長でありながらその職に専念せず、十指を超える団体の理事等の職に就いていることを指摘した。今回からは遠山氏が兼任している団体ごとに、いくつか書いていこうと思う。  
兼任しているポストを再録する。

財団法人 新国立劇場運営財団  理事長 
財団法人 松下教育研究財団 理事長
財団法人 トヨタ財団         理事長
財団法人 博報児童教育振興会  理事
財団法人 日本いけばな芸術協会 会長
社団法人 全国少年補導員協会  会長
社団法人 学術・文化・産業ネットワーク多摩 名誉会長
非営利活動法人 富士山を世界遺産にする国民会議 副理事長
文化庁文化審議会委員 同文化功労者選考分科会委員
数学教育学会            名誉顧問
株式会社NHKエンタープライズ  取締役
早寝早起き朝ごはん全国協議会  副会長
全日本社会貢献団体機構  会長

まず、理事長、会長を務めている4財団法人との関連についてである。
 松下教育研究財団は松下電器産業の、トヨタ財団はトヨタ自動車の設立した助成型財団である。ともに理事長職は非常勤のようである。2月8日の衆議院予算委員会で、民主党・武正公一議員は官僚の天下り問題について取り上げ、「理事長が非常勤」である公益法人のあり方や、就任の形態に疑義を呈し、福田首相も「改善すべき問題である」との答弁があったように記憶している。この「理事長が非常勤」なのは、中央官庁の外郭団体だけでなく、天下り官僚を受け入れる企業の作った財団などにも多く見られるものである。そのような団体は、概ね局長級かそれ以下の最終官職の天下りか、プロパーの管理職出身の常勤理事がその団体を差配している。遠山氏が理事長を務める松下教育研究財団、トヨタ財団も、問題の新国立劇場でも同様だろう。因みに、新国立劇場の筆頭の常務理事・霜鳥秋則氏も、文化庁の文化部長などを経て退職、新国立劇場が幾つ目かの天下り先であり、この先も前任者同様に大学などの理事・監事或いは教授などに転出するであろう典型的な渡り鳥である。
 松下のポストは、元文部事務次官で、退任後に国立教育研究所長、日本学術振興会理事長、独協学園理事長、そして新国立劇場運営財団初代理事長とみごとな渡り鳥ぶりを演じた木田宏氏の引退を受けての、トヨタのそれは、前任の木村尚三郎東京大学名誉教授の死去に伴う選任である。
 それにしても、日本を代表する企業が設立した財団が、理事会のトップに天下り官僚を受け入れ、非常勤でその職に就かせている現状は、まさに「改善すべき」ものだろう。遠山氏は、このトヨタ自動車からの出向社員・岡部修二氏を新国立劇場の常務理事としている。繰り返すが、遠山氏、霜鳥氏、岡部氏、もう一人の常務理事である日本経団連の元職員・角田博氏の常任理事者4名は、劇場勤務経験、舞台芸術実践経験がない。新国立劇場は、非専門家による専門劇場の運営である点でも、世界に類例のない劇場である。職に就かせた方も、職に就いた方も、不見識非常識極まりない。
 中央官庁の官僚であれ、地方自治体の役人であれ、その主流はジェネラリストである。であれば、スペシャリストには官の組織を運営させたくないだろう。しかし、その官が作った外郭団体はその存在価値の有無、妥当性の有る無しはどうであれ、すべて専門性を持つことで存在している。国が作った劇場などはその典型である。そこに、実演家、実践家であるスペシャリストを押しのけ、或いは傀儡化した上で、専門性のないジェネラリストであった所管省庁の高級官僚がその組織のトップとして天下る。臆面もなく職を得るものだと呆れもするが、翻って、専門性のない者が憶することもなく、ましてや常勤でありながら専念しないでトップを務める、その不見識非常識を批判することなく、却って迎合し追従するようなオペラ、舞踊、現代演劇の舞台芸術界の不見識非常識を超えた不甲斐無さ節操の無さに、もう救いはないのではと思ってしまう。