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「新国立劇場の開館十年」を考える(十四)
≪巨額な国費が投入されながら、理事長・芸術監督が専念しない不思議な劇場(二)≫

 「官と民の持たれ合い」を象徴する、元文化庁長官の被助成団体会長兼任 
 今回は、遠山敦子氏が兼職している財団法人日本いけばな芸術協会の会長職についてである。
この協会のウェブサイトによると、華道・生け花の四百以上の流派と、四千人以上の師範が加盟している。華道の流派がこの協会に加入しているものだけでも四百以上あるというのは驚きだ。その流派の師範が一人、いわゆる一人流儀も相当にあるようだ。また、沿革なども書かれているが、平成十四年までの記載しかなく、他のページを見ても、ほとんど二、三年前の更新が最後、という具合。
尤も、昨十九年三月に会長に就任した遠山氏の名前は役員名欄にあるので、最低限の体裁を整えているのだが、財団の寄付行為、事業計画・報告、収支予算・決算報告などについては、全く公表していない。
 協会は文化庁や地方公共団体などの支援を受けて、いけばな展などを主催している。遠山氏を会長に選任した理由は、役所への口利き、圧力を期待してのことだろう。監督或いは支援する、助成・補助金を支給する官庁の役人が、退官すると、今度は監督され、支援され、助成・補助金を受ける側の組織のトップに座る。日常になってしまった「官と民の持たれ合い」の関係である。監督官庁がこの様であればこそだが、例えば、文化庁の助成制度の審査委員などを委嘱されている演劇評論家の大笹吉雄氏が、文化庁助成事業の請け負い、補助金を受給する劇団を構成員とする社団法人日本劇団協議会の常務理事や、独立行政法人日本芸術文化振興会の委託事業者である新国立劇場の評議員を務めるというような不見識なことが起こる。フリーランサーの批評者が、国家や地方自治体、それらの外郭団体や業界団体と関わりを持つことにも違和感を抱くが、演劇界のオピニオンリーダーのつもりで立ち働いているのかも知れない。麻薬のような助成金補助金に頼ること縋ることが最も重要なテーマと化した現代の演劇界では、この大笹氏の振る舞いなどは、特段に異常なことではないのだろう。このような「官と民との持たれ合い」、官による「芸術」活動への助成制度、補助金受給に縋る緊張感の無い環境から生まれるアート、芸術文化に、明るい未来があるとは思えない。

 新国立劇場のエントランス正面に迎え花(ウェルカムフラワー)が飾られていることがある。専らオペラ劇場のオペラ、バレエ公演期間中に用意されているようだが、いつから飾られるようになったのかは記憶にない。昨年秋の今シーズン皮切りの演劇公演を観に出掛けた折、中劇場へのアプローチを塞ぐように迎え花が飾られて、鎮座する巨大な飾り花の左の隅に出来た微かな隙間を抜けて中劇場まで入った。この公演の余りの悪評判に、巨大オブジェで中劇場を蔽い隠したくなったのかと思ったほどであった。あれほどの大きな迎え花であれば、生花の費用だけでも数十万円はするだろうから、総制作費用をノーマルに支払うとしたら、(舞台作品個々の制作費用を明らかにしない劇場だけに、この迎え花の制作料なども不明であるが)数百万円のものかもしれない。
 因みに、この迎え花、作者は同協会副会長の勅使河原茜氏であった。