2017年09月

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

アーカイブ

« 「新国立劇場の開館十年を考える」(二十七)≪次期芸術監督人事について(四)≫ | メイン | 「新国立劇場の開館十年を考える」(二十九)≪次期芸術監督人事について(六)≫ »

「新国立劇場の開館十年を考える」(二十八)
≪次期芸術監督人事について(五)≫

芸術監督予定者をめぐる理事会でのやりとり 永井愛 7月14日

 この『提言と諫言』の前々回8月4日に、「新国立劇場の開館十年を考える」(二十六)≪次期芸術監督人事について(三)≫で書いたことだが、新国立劇場のサイトには、7月17日付けの「最新ニュース」に、<*一部の理事から、審議内容が公開されたことについて>があり、「そもそも、新国立劇場運営財団の理事会で芸術監督選任に関する審議内容は非公開で行われています。それは席上多くの個人名やその資質、評価などが話し合われており、自由闊達なご意見をいただくためです。したがって、討議に参加される方々にも守秘義務があります。このような会議の内容を公開することは問題であり、また、一時間にわたる会議の一部をとりあげることは恣意的な引用の恐れがあり不適切であると考えます。財団の運営に携わる理事として、遺憾なことと考えております。」との(理事長か財団執行部か判らぬが)遺憾表明が載った。また、前回8月6日の「新国立劇場の開館十年を考える」(二十七)≪次期芸術監督人事について(四)≫では、『週刊新潮』7月31日号の記事から、「事を荒立てている理事がいて残念」との遠山理事長の発言を取り上げた。
 今回は、運営が独断専行だとして批判の渦中にある遠山理事長をして、「財団の運営に携わる理事として、遺憾」「事を荒立てている」と言わしめた、理事である劇作家の永井愛氏が発表した「芸術監督予定者をめぐる理事会でのやりとり」である。
 この文章は、新宿の淀橋第3小学校の廃校跡地に設置された社団法人芸能実演家団体協議会運営の芸能花伝舎で開かれた、演劇関係者12名と関係3団体による「芸術監督選定プロセスの詳細開示を求める声明」を明らかにするための記者会見で配られたものである。全文はシアターウェブのサイト で読むことができる。
 前文には、「情報を操作してまで、鵜山現監督の再任を阻止しようとした理事長サイドのやり方に強い疑問を持ってい」て、「情報の外におかれているという意味では」、次期芸術監督に選考された「宮田氏も被害者の一人」。発表するこの文章は、当日の理事会でのメモから纏めたもので、「言葉はそのままでは」なく、「間違いが含まれている可能性もあるため、財団には是非、詳細な記録を公開していただきたい」とある。
 理事会でのやり取りは、ここでは記さない。ただ、そこにあった「時間がない」、「一任してほしい」との遠山理事長の発言が事実とすれば、そのことは異常なことと指摘しておくに止める。
 理事会がどこで、何人の出席者で、何時から何時まで開かれたかが永井氏の文章にはなく、この類いのメモとしては不足が多い。
 以前の理事会は、日本経団連の会議室を借りて開いていたようだが、この6月23日の理事会の会場は、同様に日本経団連だったのだろうか。運営財団の会長・御手洗冨士夫氏、5名いる顧問のうちの豊田章一郎、今井敬、奥田碩の3氏は、(日本)経団連の会長経験者であり、全理事31名のうちの半数が経済界から選ばれていることなどの事情から、この日本経団連ビルの会議室を借りているのかと思うが、せめて年に二度か三度の理事会は、運営財団自身の会議スペースで開催するのが筋ではないか。新国立劇場は独立行政法人日本芸術文化振興会の施設であり、運営財団は単なる運営を随意契約によって託されている団体である。財団執行部はその辺りの事情を斟酌考慮して、理事会を劇場の外で実施しているのだろうか。であれば、というよりもそもそも、この劇場とは別のところに運営財団の根拠地、ヘッドクオーターはあるべきで、理事長室や常務理事室、管理・総務部門のオフィス、会議室は、劇場内に置く必要もない。遠山理事長は、施設としての劇場の「場長」に任ぜられているのではなく、あくまでも、施設運営業務を委託されている団体の責任者、という立場である。このあたりの制度、或いは制度理解の不備、けじめのなさが、今回の事態の誘因の一つだと言えば言い過ぎだろうか。
 
 <理事会のやりとり>の後には、<補足>があり、そこには、財務省や文化庁への影響力を期待して、小田島雄志、鈴木忠志、山崎正和の3氏を理事長の顧問(アドバイザー)に迎える考えが財団側にあることを、劇場の演劇部門の中島豊プロデューサーから聞かされたこと、と書いている。
また、「制作部が芸術監督に対し、これまでより積極的に発言や提言を行う。芸術監督が独裁的になったり、暴走されたりすると制作陣はやりにくい。こうした体制の変更は理事会にかける必要はないと思っている」との霜鳥秋則常務理事の発言がある。
 この、「理事長の顧問(アドバイザー)」の話は、先の『週刊新潮』での、「芸術顧問の話は間違ったニュース」との遠山氏の否定で済む話かどうか。永井氏はこの文章の最後に、<疑問と問題点>として、
 「顧問(アドバイザー)についても疑問は多い。いったい何をアドバイスするのか。芸術監督に直接ものを言わないとしても、理事長への「助言」が、発言力を強めた制作サイドに降りてきて、現場に影響を与えることにならないか。そうなれば、芸術監督の上にもう一人監督がいるのと同じことになる。芸術監督制度が骨抜きになってしまう。劇場の根幹を揺るがす、こうした問題はオープンな議論があってしかるべきなのに、執行部のやり方にはまったく透明性がない。」
 と記しているが、その疑いは至極真っ当である。遠山氏の言う通りに、「芸術顧問の話は間違ったニュース」で、そもそも「最初からなかった話」ということではないのであれば、それこそ劇場のサイトの「最新ニュース」で、どう間違ったニュースなのかを知らせるべきだろう。
 小田島雄志、鈴木忠志、山崎正和の3氏が、この件についてどう考えているのかは、寡聞にして知らない。