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『市川家の敎草』に教えられるGOLDONIの道<開設記念日に寄せて>

 夫れ市川家といへるは外を求むるべからず仁義禮智信なり。
 仁に曰く譬へ門弟召使たりとも常に情をかけ、大雪大雨の節などには藥用は格別、我さへ堪忍さへすれば難儀なし。常に美食せず、萬事身分相應に暮すときは、おのづから金銀も廻るものなり、夫れを貧窮なる人に施すは是れ則仁なり、天道の惠によりて立身出世出來るなり。
 義に曰く無據き人に頼まるる事あらば何事にも身に引受けて世話すべし。先方に不實有りとも一度約せし時あらば、侮む事なく潔くする事是れ則義の道なり。
 禮に曰く上を敬ひ、下を憐み天地神佛を尊み先祖を敬し人の詞を用ひ女色を謹み人と交り深く惡しき友も好き程に附合ひ、人の惡を語らず日々の勤怠らず心を練る是れ則禮の道なり。
 智に曰く役者道に於て恭なくも天子將軍より公家武家町人百姓乞食非人迄の眞似をする見方智也。然し乞食非人は其儘に似する時は見苦しく、見物が事によりては嫌はるる物也。只好き程に勤むる是れ大事なり。又見物の氣を得る事是れ則智のなす處なり。
 信に曰く朋友他人にも誠の届く様に附合ふ時は先方にも僞りなく交る物也、是れ人道の第一なり。嘘僞りは人道の總魔なりと知るべし。誠あれば神佛とても形に影のそふ如く守り給ふ物なり、是れ則信の道なり。
 市川流の極意は人道の極祕也。毎日御見物を大事に千人も一人も同じことに勤め怠る事勿れ、是れ市川家の法式也。

 これは、十代目團十郎(九代目女婿・市川三升。没後に十代目を追贈)まで伝えられ守られてきた市川家の家訓である。今日13日は、九代目團十郎の百六回目の正忌であり、GOLDONI九回目の開設記念日である。