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五代目市川團十郎の『書付け』<開設記念日に寄せて>

一、よい人のまねする、わる人のまねせず
一、人のまねわるし、心でまねるはよし
一、下手と組まず、上手と組む、下手とつきあはず、下手と外あるかず、巻添にならぬように引ずり込まれぬように
一、書抜きの通りよく読み覺える、稽古よくよく幾遍もとつくりとする
一、總ざらひ、初日の心、精を出す、初日よりよくするともわるくせず、初日の通り、總ざらひ餘りによいと初日わるし、そが心得べし
一、若きうちしすぎると、老いてする事にこまる
一、ふだんもよい程の事はなし、舞薹大切にする、ふだんどうでもよし
一、見る人こしらへて置き、よいか悪いか、ほんの所を聞き、わるい事はようみんなにわるいかと聞き、わるい事はよす
一、出世をするに従ひ、わるい事をいうてくれる人なし、そこでわるい事を見て聞いて言つてくれる人をこしらへ置くなり
一、いつまでもおれは下手だと思ふてゐるがよし、一生いつまでも下手だと思ふがよし、おれは上手だと思ふともうそれきりなり
一、よい役も惡い役も同じようにする、惡い役捨てず、捨てれば猶わるく見える、惡い役でもやつぱりこつて身にしみてするなり
一、我が思ふほどは人はこまかに見ず
一、壽命なければやれず、長生きせねばならず、孝行身上、身持ち謹み、氣ゆるめず、浮かめず、圖に乗らず、……