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「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(八)

行政刷新会議の事業仕分けで、文部科学省・文化庁の事業に「廃止」「整理・削減」連発(2)

 11日に行われた事業仕分けのうち、文部科学省、文化庁の芸術文化関連の事業と、その概算要求額は以下の通りである。
 (文部科学省及び文化庁の「平成22年度概算要求の概要」、独立行政法人日本芸術文化振興会の「平成21年度予算」、事業仕分け当日に配布・発表された資料集にある文部科学省と文化庁が作成した「施策・事業シート(概要説明書)」を参照した。)

a芸術文化の振興事業 (財)新国立劇場運営運営財団委託費   48億23百万円
                (財)おきなわ運営財団委託費          6億85百万円

b芸術文化振興基金  運用益による基金助成事業費(21年度)   14億35百万円  

c芸術創造・地域文化振興事業 優れた芸術活動への重点的支援 55億17百万円
                     地域の芸術拠点形成事業       11億45百万円

d子どものための優れた舞台芸術事業                   49億75百万円

e芸術家の国際交流事業  芸術による国際交流活動への支援   15億48百万円

f世界にはばたく新進芸術家等の人材育成  海外研修         6億55百万円
                            育成公演              87百万円
                  芸術団体人材育成支援           9億21百万円
                         
g伝統文化こども教室事業                          18億20百万円

h学校への芸術家派遣事業                          3億02百万円

iコミュニケーション教育拠点形成事業                    1億24百万円  


 文化庁の平成22年度概算要求の総額は1,040億03百万円である。
 今回の事業仕分けの対象になった上記事業(bとiを除く)の概算要求額の合計は214億78百万円であり、文化庁概算要求額の2割強。文化庁予算中で大きな比重を占める文化財保護、美術振興については今回の事業仕分けの対象にはならなかった。
 ちなみに、これらの事業を行っている
独立行政法人国立文化財機構への運営交付金、施設整備費の合計は112億97百万円、
独立行政法人国立美術館への運営交付金、設備整備費の合計は135億1千万円。
 独立行政法人日本芸術文化振興会への運営費交付金は、新国立劇場運営財団とおきなわ運営財団への事業委託費を含め総額117億85百万円。
 従って文部科学省、文化庁の幹部職員が退職後に、あたかも指定席のようにして理事、監事、館長などに就く文化関係の独立行政法人3カ所への支出額の総計は365億92百万円であり、他の科目の支出なども含めると文化庁予算の4割近い規模になるだろう。
 前述のように文化庁の概算要求の中でも大きな比重を占める3独立行政法人(日本芸術文化振興会の運営交付金中、新国立劇場とおきなわの2劇場への業務委託については除く)の事業とその概算要求額については、「独立行政法人の全廃」を政権公約にした民主党としては、せめて一つくらいは実施しても良かったのではないか。このことについては、改めて書くつもりである。

 次は当日配布された資料集にある、この事業仕分けのために財務省主計局が作成した「事業予算についての論点等説明シート」から抄録する。

≪財務省主計局主計官による論点整理≫
<a芸術文化の振興事業(新国立劇場運営運営財団、おきなわ運営財団委託費)>
 ◎事業の効率性 
 独立行政法人日本芸術文化振興会が所有する他の劇場については、振興会が直轄で管理運営している。他方、当該2劇場については公益法人に管理委託しているが、妥当か。

<b芸術文化振興基金>  
<c芸術創造・地域文化振興事業(優れた芸術活動への重点的支援、地域の芸術拠点形成事業)>
<d子どものための優れた舞台芸術事業>
 ◎事業の効率性
 当該3事業から直接的又は間接的に公演団体への助成が行われており、重複があるのではないか。整理のうえ縮減を図るべきではないか。
 芸術創造・地域文化振興事業    →芸術水準の高い公演団体への支援
 子どものための優れた舞台芸術事業 →優れた舞台芸術等の鑑賞機会の提供を支援
 芸術文化振興基金         →公演団体への助成メニューあり
 ◎事業の妥当性
 チケット代、協賛金などで自主運営できている団体がある一方、毎年助成を受けている団体もあり、本事業が団体の経済的自立に向けた取組みを妨げているのではないか。国費等による助成対象は、国費投入にふさわしいものに絞り込むべきではないか。

<f世界にはばたく新進芸術家等の人材育成 海外研修>
 ◎事業の効率性
 欧米の大学や芸術団体等への留学生(300人余)に対し、旅費と滞在費を助成する事業であるが、国際交流基金の事業と重複しているのではないか。整理のうえ抑制すべきではないか。
 ◎国費投入の妥当性
 留学経費として一人当たり往復約120万円の交通費と年額約350万円の滞在費を支給(総額6億円以上)しているが、過大ではないか。自己研鑽であり受益者負担の原則に立って本人の負担を求めるべきはないか。
 ◎事業の有効性
 本事業により、これまでに累計2700名余が留学している。その後の芸術活動に活かされているのか。帰国後の芸術家への定着率は高いのかといった点について検証し、事業の継続の是非について厳しく評価すべきではないか。

<e芸術家の国際交流事業  芸術による国際交流活動への支援>
 ◎事業の効率性
 芸術団体の海外公演を支援する事業であるが、国際交流基金の事業と重複しているのではないか。整理のうえ抑制すべきではないか。
 年間36団体の海外公演について支援しているが、支援数が過大ではないか。
 ◎国費投入の妥当性
 1公演当たりの助成額が5~6千万円と高額であり、助成対象が現地での公演費に加え、団員の往復航空費や滞在費まで措置する制度となっている。国の支援範囲を絞り込むべきではないか。

<g伝統文化こども教室事業>
 ◎事業の有効性
 本事業は、地域の自主的な取組みの促進を目的とするものであるが、支援案件の中には最長7年に亘って事業実施しているものがある。事業目的に照らし、単年度の支援に限定すべきではないか。
 年間5,000箇所もの事業が採択されている結果、すでに地方で実施されている活動(例えば学校でのお茶やお花の体験活動)への後追いの助成になっているのではないか。 ◎事業の効率性
 本事業は、募集から採択まで一括して(財団法人伝統文化活性化国民協会に)委託で行われているが、妥当か。
 委託費の節減の取組みはなされているか。        

<h学校への芸術家派遣事業>
<iコミュニケーション教育拠点形成事業> 
 ◎事業の必要性
 学校への芸術家派遣事業は平成14年から8年にわたり継続して行われており、今後継続して行う必要性に乏しいのではないか。国は地方の優良事例を集めて周知すれば足りるのではないか。
 コミュニケーション教育拠点形成事業については、演劇の実演体験等を行うこととしているが、学校への芸術家派遣事業と類似しているのではないか。