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ミュージカル「エビータ」に映る日本の危うさ(2)

「エビータ」を観劇して、エビータと鳩山首相を、アルゼンチンと日本を重ねて感じた観客が多かったのではと思う。産経の論説委員氏は、「国有化断行」「賃金・公共支出拡大」「福祉増額」などのプラカードを持つ群衆の出る場面で、<『子ども手当』や『国債乱発』を加えたら、鳩山さんと同じだね>」との観客席でのささやきを耳にしたと書いているが、私も、休憩時のロビーで、「まったく民主党の政策は、アルゼンチンと一緒だ」とか、「鳩山民主党とペロン夫妻は同質だ」などと語り合っている観客の声を聞いた。母親から僅か7年で12億6千万円を超える脱税を企図した疑いの残る贈与を受けながら、その贈与自体も知らなかったと繰り返し、「月1500万円の子ども手当」「親不孝」「マザコン」「脱税」「無能」「政治家失格」のレッテルが定着した感のある鳩山首相、自ら国民から「冷笑を受けている」と語るほどの天晴れだが、自由劇場のロビーで耳にした声は、こんな人物が「政権交代」だけを叫んで勝利した夏の選挙から5か月の民主党政権の体たらくに、「冷笑」ではなく、もっと深い苛立ちや怒り、失望を含ませてのもののようだった。
 「友愛」をキャッチフレーズにしている鳩山首相だが、エビータも「友愛」好きである。1946年の大統領選挙で圧勝したペロンと共に大統領宮殿に立つエビータは歌う。
「…今の私の心が求めるのは あなた方の愛 ただそれだけ こんな所で着飾っているけれど 信じてください …」
「…今日 みんなが願うものはただひとつ 今まで変わらず 結びあってきた絆 それは愛だけ 共にいて仲間達…」
「…お話する事はこれだけなの たったひとつの そうたったひとつの 真心を あなたのもとに…」
 相続、贈与などで蓄えた個人資産が百億円に迫ると言われる金萬政治家と、田舎町に私生児として生まれ、野心と美貌を武器に、男と権力を踏み台にのし上がるエビータ。あまりに対照的な二人の育ちだが、「友愛」「命」を強調し、麻生前首相も顔負けの飲み屋料理屋などでの遊興三昧、「こんな所で着飾っているけれど信じてください。願っていることは愛だけ」と歌うエビータのように、「こんな良い暮らしをしているけれど、こんな所で遊興しているけれど、信じてください。願っているのは友愛だけ」と言われても、昨夏に民主党を勝たせ、数ヵ月後には失望してしまった多くの国民の心には届くまい。 
 「エビータ」の二幕後半で狂言回しチェの歌う詞は暗示的である。
「…金は出ていくどこまでも ばらまき福祉が首を絞める かまやしないさみんなが喜ぶ どこから集めようと金に変わりはないからね 慈善事業に帳簿はいらない 良いことするのに数字は邪魔 ばらまけ すべて 我らがエバ・ペロン…」。