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「財団法人新国立劇場運営財団の存廃」について考える(十七)

補助金どっぷり 農業ぽっくり

 先週の地下鉄の中刷り広告で目を引いたのは、『WEDGE』4月号の見出しにあった、<補助金どっぷり 農業ぽっくり ―選挙対策のバラマキで ニッポン農業 突然死へ>。早速、地下鉄の駅の売店で購入した。
 この特集「WEDGE Special Report 補助金どっぷり 農業ぽっくり」は全13ページ建てで、その最初の見開き2ページには、米百俵ならぬ「米百票」と書かれたタスキを掛け、ほくそ笑む小沢一郎・民主党幹事長と思しき人物が民主党のマークのついたコンバインに乗り、稲を刈らずに票を買っているつもりか後部に備え付けた投票箱に票を吸い上げているイラストが描かれている。その見開き右部分のリードの文章はこうだ。
<民主党農政の目玉である「戸別所得補償制度」がこの4月からスタートする。「食料自給率向上」というトリックを用い、年金やサラリーマン所得に頼る兼業農家にも補助金をばら撒いた。これぞ政権を問わず繰り返されてきた、典型的な農村票目当ての選挙対策だ。プロ農家の農地が貸し剥されるなど、補助金農政による混乱が生じている。担い手の声に反する政策をこれ以上続けると、ある日突然、日本の農業は再生不能に陥ってしまう>。
 そもそも戸別所得補償制度とはなにか。「稲作農家を対象に、2010年度予算で5600億円が計上」「コメ生産が1兆8000億円程度だから、これだけでも膨大金額」「政府はコメのキログラムあたりの生産費を計算する。この際、自家労働も雇用者賃金に近い時給で評価するので、生産費はコメの市場価格をはるかに上回った高水準になる。この生産費と市場価格の差額を、政府が農家の指定口座に、直接、所得補償金として入金する」というもの。したがって、市場価格が低迷しても、コメさえ作れば利益が保証されるのだから、増産意欲が増すが、日本全体ではコメが余って米価が下がる。「<バラマキ→増産→米価下落→さらなるバラマキ>のスパイラルを引き起こし、穴は際限なく広がっていく。ますます補助金頼みを強めざるをえなくなるであろうが、その補助金も、主要先進国で最悪という日本の財政では、早晩、尽きる。わざわざ稲作を補助金依存症にしておいて、やがて補助金が切れるのだから、突然死を強いているようなものである。」

 「そもそも真摯に農業生産の腕を磨き、販路開拓や食品加工との連携などの努力をしてきた農家ならば、すでに安定的な値段で農産物を売ることができており、戸別所得補償など必要としていない。戸別所得補償で救済されるのは、生産や経営の努力を怠った者である。…」と続く文章を読んでいて、察しの悪い私も気が付いた。この戸別所得補償制度と、文化庁、芸術文化振興基金などの公的助成制度は、同じ発想であり、同じ構造であり、そして同様な災禍を招くだろうと。上の文にある農業、農家、農産物、戸別所得補償制度を、演劇、演劇人、劇場、助成金と読み換えたらよい。
 「そもそも真摯に演劇の腕を磨き、販路開拓や外部との連携などの努力をしてきた演劇人や演劇集団、劇場ならば、すでに安定的な値段で製作物を売ることができており、助成金など必要としていない。助成金で救済されるのは、製作や経営の努力を怠った者である」。